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2025/05/22 16:33

店舗情報のページでも書かせていただきましたが、当店ではワイン本来の魅力を皆様にお伝えするためには、輸入状態も含め鮮度管理を徹底し、何一つ損なわない状態でお渡ししなければならない」と考えております。


今回はその為の最重要ポイント一つである当店のワインセラーについてご紹介いたします。だいぶ長めかつマニアックなお話になるかとは思いますが、当店の品質保証の要でもありますのでもしよろしければご覧ください。



さて、ワインセラーに求めることは大小様々あるかもしれませんが、大きくこの2つが鍵となります。

「温度」と「湿度」


温度は約10~15℃(シャンパーニュやアルザスワインがメインのセラーでしたら8℃くらいまで)、湿度は約70%あたりが理想的ではあるかと思います。ではこの設定でエアコンと加湿器を用意すればできるのかと言われるとそうではありません。どうしても冷気貯まりや湿度過多の部分の結露やカビの発生、冷房の吹き出し口近くのワインの低温劣化など様々な問題が出てきます。


特に結露は最も注意しなければいけないポイントで、最悪、建物自体にダメージを与えてしまう原因になりかねません。この点はご自宅の一室をセラー代わりにしている方にも是非注意していただきたいです。


では、どのようにしてこれらの問題をクリアしたか。この2点になります。


① 建物に全く触れないようにセラーを設置する

② 下から上への自然な空気の回流を作り出す


①から説明しますと、当店のセラーは天井含め建物から約10㎝以上離れております。よく断熱材を使えば触れていても問題ないという話も聞きますが、断熱材はあくまで熱の伝達を遅らせるに過ぎず完璧ではありません。これに加え建物内の温度を常時生活圏内程度の温度に保っております。松本市も真夏は35℃以上になりますし、真冬は-10℃になることもあります。セラー内と外気との温度差がありすぎると結露が発生してしまいますので、当店では閉店時も冷房・暖房を使用して結露の発生を防いでおります。


②の考え方が恐らく通常のワインセラーと大きく違う部分かと思います。

空気というのは「冷たい空気は下に、暖かい空気は上に」という性質があります。この性質に乗っ取り下から冷気を輩出し、プールに水が溜まっていくように冷気を下から積み重ね、最後に上部で暖気を吸気することでセラー内に自然な空気の回流を作り出すことができます。


これによりどのような利点があるのかというと、

・常に空気が流れているので結露やカビの発生を抑制

・セラー全体に均一に冷気を行き渡らせることが出来る

という利点があります。結露やカビは一か所に水分が留まり続けることで発生するので、常に空気を動かすことで抑制しております。実際これまでセラー内ではカビの発生は一切しておりません。


さらに付け加えると、業務用の冷蔵エアコンは時に設定以下の非常に冷たい冷気(0度近く)を吹き出すので、ワインに直接当ててしまうと低温劣化の原因となります。



ここまでお話しした通り健全な環境のセラー造りは色々と気を付けなければいけないことが多いのですが、具体的にどの様な仕様にしたのかというのをここからご説明していきます。


初期の自作の概念図です。※見づらくてすみません...


右下の冷蔵ユニットがある小部屋で冷気を作り、押し出しファンとフレキシブルダクトでセラー内へ。赤い四角が陳列棚となっておりその背部の下から緑色の矢印の部分から冷気を出しております。※写真では排出口が4か所になっておりますが、実際は3か所になっております。


窓はスペーシアではないのですが、結露防止のため真空の断熱ガラスを使用しております。


ここからは完成したセラーの写真と共にご説明します。


こちらがセラーに入る前の風除室への入り口となります。カウンターは試飲スペースとなっており、セラー内のワインを眺めながら試飲することができます。

風除室の先がセラーの入り口となります。このスペースを設けることで開閉時のセラー内の適温の流出を最小限に抑えます。セラーは食品倉庫などで見かけるパネル冷蔵庫を使用しております。正面扉は空調室で右側がセラーの入り口となります。

このダクトを使って空調室で作った冷気をセラー内に送っております。この冷気の量も出口までの距離に応じて調整しているのでムラなく下から全体へ行き渡らせております。

床下吹き出し口付近と陳列箇所付近の温度差が約1℃、湿度も理想的な数値となっております。

そして、暖気は上に上がっていく性質のとおり、空調室と面した部分に通気口を設け冷蔵ユニットの吸気部分に暖気を戻します。これで下から上への自然な空気の回流が生まれます。そして冷蔵ユニットから出る結露水を黒いゴムホース下のボックスに貯めることで、加湿器を使わずとも湿度も自然な空気の回流の中で循環していきます。


陳列棚の材質を木材にしていることも重要なことです。木材がセラー内の湿度を程よくストックし排出する役割を担っているので、人の出入りなどで温度や湿度に変化があったとしてもオートマチックに通常の状態をキープしてくれます。ですので当店のセラーはいつも新築の木造物件のような新しい木の香りがします。もちろんカビは一切発生しておりません。


長々とご説明させていただきましたが、以上が当店のワインセラーのご紹介となります。このような環境で当店のワイン達は皆様とお会いできる日をお待ちしております。

☆この冷却システムはある店舗のワインセラーを参考にしており、そちらを勉強させていただいたうえで作成しております。