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2025/07/11 16:54
前回に引き続きまして、7/2(水)~7/6(日)におこないました試飲販売会のレポートの後編となります。ロワール地方のシノンの赤白やコルディエの新しくプルミエ・クリュに昇格した畑、マルク・コランのシャサーニュ・モンラッシェなどをコメントしていきます。
試飲レポート・続き
シュナンブラン100%で、青リンゴと白桃を併せたような、爽やかさのある果実味。この暑い猛暑の時は場合によってはシャルドネの洋梨のような密感が重たく感じることがありますが、このワインならスルスルと喉を潤してくれるでしょう。あまり柑橘の風味は強くなく、爽やかにセージのようなハーブも感じられます。リエットや白ソーセージとの相性も良いかもしれません。
こちらも非常に飲みやすい口当たりで、渋すぎず軽すぎず、さらに酸味もほどほど。まさにミディアムボディといった感じです。赤いベリーのような果実味にズッキーニに近い旨味とグリーンノート、風味からズッキーニなどの夏野菜をグリルしたら間違いなく美味しいだろうなと思わせてくれます。カベルネ・フランということはこちらも先日投稿した鰹との相性も良さそうです。
発酵から熟成まで全て樽を使用したキュヴェで、試飲する前はかなり樽のバニラのような風味が強いのかなと想像していましたが、決してそういうことはなく、トロピカルな果実味とレモンの柑橘の風味のバランスが良い程よい飲みごたえのシャルドネです。新樽を使用していないのが要因でしょう。これで4,000円はかなりパフォーマンスが良いと思います!
前回の投稿に組み込んでも良かったのですが、ちょっと焦点がぶれそうだったのでこちらにコメントを。フワッとした香り立ちの中にはオレンジ、フェンネル、オレガノと様々な柑橘やハーブの香り、そこから良く熟した洋梨と青リンゴの果実風味が流れてきます。酸味は豊富ですが角はなく穏やかに広がり、魚介、鶏肉・豚肉、根菜など様々なミネラルがそれらを引き立てます。2023年のワインは最初から抜群な味わいですので、こちらも本当に素晴らしいワインです!
プイィ・フュイッセ村で2020年から1級に昇格した畑のうちの一つで、昔から飲んでいる親しみのあるキュヴェです。が、これはかなりレベルが高かったです!このワインの特徴である白い花やバニラビーンズのような甘華やかな香りはそのままに、洗練されたミネラルが全体を包むようなイメージを感じ、なるほど確かにこれは1級に昇格するなという風に改めて思わされました。香りや果実味に濃密な洋梨の蜜の風味があり更にはグレープフルーツのような酸もはっきりと主張してくるので、美しくも力強いワインです。
こちらも2020年に1級に昇格した畑です。ペリエールという名前の畑はブルゴーニュに数多くあり、例えばムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、サン・トーバン、あとはジュヴレ・シャンベルタンにもあります。ペリエールとは「石切り場」という意味で昔(今もある場所も)近くに採石場があった畑の名前に使われたそうです。この地域で採石するのは主に石灰石が多かったので、ペリエールという畑のワインは村の垣根を越えて共通したニュアンスが感じられます。やはり、このワインも石灰質系のミネラルが下からググっと上がってくるように感じ、オレンジの風味やディル、セージといったハーブの香り、コルディエのワインの特徴でもある強い果実味とペリエールという畑の個性が融合した品格あるワインです。
一言で言えば力強い!それは樽の風味やアルコールの高さという意味ではなく、土台となるミネラルの部分が豊富で層が厚く、これがかなり強い飲みごたえに繋がっています。サヴィニー・レ・ボーヌ・ブランの時にも様々なミネラルがあると言いましたが、こちらはその一つ一つの要素がパワーアップしたような雰囲気で、魚介、甲殻類、牛肉から鶏肉、根菜や他の野菜とあらゆる旨味を感じます。トップノートは熟したオレンジ、カルダモンやターメリックといったスパイスのニュアンスもわずかに。もちろん果実味も洋梨の風味が中心となっています。今飲んでも美味しいですが、せめてもう半年待っても良いかもしれません。
そして、今回有料試飲としてギルベール・ジレのサヴィニー・レ・ボーヌ・ルージュの2022年を用意していましたので、次にギルベール・ジレのワインがなぜここまで全世界のブルゴーニュワイン愛好家に注目されているのか、試飲の感想も含めて自分なりに考察してみたいと思います。
ギルベール・ジレとは?

初めてギルベール・ジレのワインを試飲したのは初リリースとなる2020年のアリゴテ。20mlにも満たない量を試飲してみた瞬間に、「これは簡単にポンポン開けていいワインではないぞ!」と。そして同時に思い浮かべたのはドーヴネのアリゴテ。味わいや風味は全く違いますが同レベルのスケールの大きさに衝撃を受けたのです。
1991年生まれ(ということは今34歳⁈)のベンジャマン ギルベール氏。ドメーヌ・ド・ランブレイ、トリンバック、シャトー・オー・ブリオンと名だたる生産者で研修を積み、伝説のドメーヌの主、ジャッキー・トルショー氏に師事してそのワインをモデルとして作っているとは言え、初めて初年度からこのクオリティ生み出すセンスと技術があるのはどういうことなのでしょうか...紛れもなく天才だと思います。
あと初年度が2020年と非常に強いヴィンテージでアタックも強くインパクトも大きかったので、もしかしたらそこも一気に注目をあびた要因なのかもしれません。いずれにせよ全世界の注目を集めたギルベール・ジレのワインですが、2021年ヴィンテージで転売が横行してしまうという残念な出来事が起きます。
このことにより、今回の2022年から販売先に制限がかかることになってしまいました。転売は生産者はもちろん、純粋にそのワインを楽しみたいという愛好家にとっても許すことのできない行為です。これを機にこのようなことが少しでも減ってくれることを願うばかりです。
さて、話を戻しまして改めてこの生産者のワインがなぜ注目されるのか、今度は試飲した感想を含めて自分なりの考察を書きたいと思います。完全なる主観なので違うな...と思う方もいらっしゃるとは思いますが、どうぞご容赦ください。
その魅力とは?
2022年 サヴィニー・レ・ボーヌ・ルージュ / ギルベール・ジレ
香りの色彩のイメージは色鮮やかな朱色に少しオレンジや蒼が刺し色に加わったよう。最高級のグリオットチェリーやミラベル(アルザス地方のスモモの一種)といった果実の風味、スパイスにクローヴ、圧倒される風味の中には赤いバラのようなフローラルな香りもありますが風味の主体は前述のベリー達だと思います。豊かな酸としなやかで全くストレスを感じない渋味。口に含んだ瞬間から一気に広がり身体に染み込んでいきます。
ここまでがワインのテイスティングコメント的な部分ですが、そうではなくこのワインの凄さとも言える特徴を挙げるとすれば、
それは「緻密さ」だと思います。
この緻密という言葉は単に凝縮感と強いという意味ではありません。例えるならば...風味を閉じ込めた粒子のようなものが、他のワインならば少し隙間が出来たり整然となっていない様相に対して、ギルベール・ジレは粒子に隙が無く完璧な構成で味わうことができる。なので含んだ瞬間から身体に染み込んでいき、内にある精神的な部分に直接感動を伝達する。そこが他のワインとは違う、だから愛好家たちが驚き魅了されるのだというのが試飲をしてみたうえでの考察です。
ジョルジュ・ルーミエは「誰をも魅了する華やかさ」
エマニュエル・ルジェが「甘露な果実味とピュアリテ(純粋性)」
ギルベールジレは「圧倒的な緻密さと完璧な構成」
ギルベール・ジレはこの両生産者と現時点で並ぶことに異論はないくらいのレベルがあると思います。本当に素晴らしい生産者とワインだということを改めて再確認いたしました。
※ジョルジュ・ルーミエとエマニュエル・ルジェの特徴も完全に自分の主観ですのでご容赦ください。